$\left(1+\dfrac{1}{1}\right)^1=1$ です。
$\left(1+\dfrac{1}{2}\right)^2=2.25$ です。
$\left(1+\dfrac{1}{3}\right)^3\fallingdotseq 2.37$ です。
$\vdots$
$\left(1+\dfrac{1}{100}\right)^{100}$
$\vdots$
これをひたすら計算していったときに近づく値をネイピア数または自然対数の底と言います。
ネイピア数の定義
突然ですが、$a_n=\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^{n}$ という数列について考えてみます。
実際にこの数列の最初の数項を計算してみると、
$a_1=(1+1)^1=2$
$a_2=(1+\frac{1}{2})^2=\frac{9}{4}=2.25$
$a_3=(1+\frac{1}{3})^3=\frac{64}{27}\simeq 2.370\cdots$
となります。
$n$ をだんだん大きくしていくと、$a_n$ は $2.71828\cdots$ という実数にどんどん近づくことが知られています。この値をネイピア数と定義します。ネイピア数を $e$ と表記します。
極限の形で書くと、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n=e$
となります。
ネイピア数は、$2.7182818284\cdots$ という、いつまでも続く、循環しない無限小数です。ネイピア数は循環しない無限小数ですので、無理数です。
参考:有理数と無理数の意味といろいろな例
ネイピア数の性質
それはネイピア数にはきれいな性質があり、その結果として(数学や物理、化学における)様々な場面で登場するからです。
具体的には、
$(e^x)’=e^x$(微分しても変わらない)
という性質がポイントになります(この性質の証明は高校数学の教科書などを参照してください)。
「微分しても変わらない」
→「いろいろな微分方程式の解になる」
→「世の中の多くの現象は微分方程式で記述されるので、$e$ は世の中の多くの現象の記述に役立つ」
→「定義はイマイチ分かりにくいけど、ネイピア数 $e$ は重要だから勉強しよう!」
という感じです。
自然対数の底
自然対数(の関数) $\log_e x$ を $x$ で微分すると、$\dfrac{1}{x}$ となることが知られています。つまり、$\dfrac{1}{x}$ を積分すると自然対数が登場します。
参考:logxの微分が1/xであることの証明をていねいに
このようにきれいな性質があるため、数学では底を $e$ とする対数を考える機会が非常に多いです。そのため、自然対数 $\log_e x$ の底 $e$ を省略して単に $\log x$ と書くことも多いです。
次回は オイラーの公式e^πi=-1の意味と証明 を解説します。