行列の内積の定義と性質

通常の行列の積について確認してから、行列の内積について解説します。

行列の積

「通常の」行列の積は、図のようにベクトルの内積を使って定義されます。

行列積の例3

詳しくは 行列の積の計算方法と例題 を参照してください。

この記事では、行列同士の別の種類のかけ算である、行列の内積(Frobenius Product)について紹介します。

行列の内積の定義

同じサイズの2つの正方行列 $A$、$B$ が与えられたとき、$A$ と $B$ の対応する成分の積の全ての和を、$A\cdot B$ と定義しましょう。

例えば、
$A=\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\a_{21}&a_{22}\end{pmatrix}$、$B=\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\b_{21}&b_{22}\end{pmatrix}$
のとき、
$A\cdot B=a_{11}b_{11}+a_{12}b_{12}+a_{21}b_{21}+a_{22}b_{22}$
です。

このように定義した $A\cdot B$ は、内積が満たすべき性質を満たします。つまり、$A\cdot B$ は行列の内積となります。

行列の内積と順番

まず、定義より、$A\cdot B=B\cdot A$ であることが分かります。順番を交換しても値は同じです。

行列の内積とトレース

行列の内積は、
$A\cdot B=\mathrm{tr}(A^{\top}B)$
という公式を満たします。

※$\mathrm{tr}(A)$ は $A$ の対角成分の和:
$\displaystyle\sum_{i=1}^na_{ii}$
のことです。

これを証明してみましょう。
まず、$A^{\top}$ の $k$ 行目は($A$ を転置していることに注意すると)、
$\begin{pmatrix}a_{1k}&a_{2k}&\cdots &a_{nk}\end{pmatrix}$
で、$B$ の $k$ 列目は、
$\begin{pmatrix}b_{1k}\\b_{2k}\\\vdots\\b_{nk}\end{pmatrix}$
なので、$A^{\top}B$ の $kk$ 成分は、
$c_k=\displaystyle\sum_{i=1}^na_{ik}b_{ik}$
となります。

・$\mathrm{tr}(A^{\top}B)$ は、$c_k$ を $k=1$ から $k=n$ まで足し上げたものです。
・そして、実際に $\displaystyle\sum_{k=1}^nc_k$ について考えると、これは、$A$ と $B$ の対応する成分の積の全ての和、つまり、$A\cdot B$ になっています。

同様に、
$A\cdot B=\mathrm{tr}(AB^{\top})$
$A\cdot B=\mathrm{tr}(B^{\top}A)$
$A\cdot B=\mathrm{tr}(BA^{\top})$
であることも分かります。

次:行列式の公式、性質一覧
前:ベクトルと行列の積の基本的な5つの式

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