デシベルは、「音のうるささ」「騒音の度合い」を表すために用いられることが多い単位です。$20\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$ というデシベルの計算式の意味を詳しく解説します。
デシベル(dB)の意味
音圧(音による圧力)が $P$ であるような音の「デシベル値」は
$デシベル=20\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
という式で計算されます。ただし、$P_0$ は基準となる音圧で、人間が聞き取れる最小音の $2.0\times 10^{-5}$ パスカルです。
例えば、音圧が基準値の100倍であるような音のデシベル値は、$P=100P_0$ として計算すると、
$デシベル=20\log_{10}100=20\times 2=40$
となり $40$ デシベルであることが分かります。
デシベルと音の大きさの目安
6デシベル上がるごとに、音圧がおよそ2倍になります。
デシベル | 音圧 | イメージ |
0デシベル | 基準値と同じ | 人間が聞き取れる限界ギリギリ |
20デシベル | 基準値の10倍 | ささやき |
40デシベル | 基準値の100倍 | 静かな住宅地の昼 |
60デシベル | 基準値の1000倍 | うるさい(普通の会話) |
80デシベル | 基準値の1万倍 | きわめてうるさい(地下鉄の社内) |
100デシベル | 基準値の10万倍 | 電車が通るときのガード下 |
120デシベル | 基準値の100万倍 | 飛行機のエンジンの近く |
デシベルの計算式の理由
$20\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
という式で定義されるのか、4つのポイントに分けて理由を解説します。
「音のうるささ」という感覚値をどのように定めればよいのか、1から考えてみましょう。
常用対数を使う
人間は、音の強さ(エネルギー)が「2倍、4倍、8倍」のように倍増していくときに「等間隔でうるさくなった」ように感じます。
そこで、エネルギー(単位時間に単位面積を通過するエネルギー)が $E$ である音の「うるささ」を
$\log_{10} E$
と定めればよいのでは? と考えることができます。そうすればエネルギーが倍になるごとに、音のうるささ」は一定値ずつ増えていき、感覚に合致します。
基準値からの比で表す
さらに、人間が聞き取れる限界ギリギリの音を基準として、この基準の音の「うるささ」が0になるようにすれば、分かりやすいでしょう。
そこで、基準音のエネルギーを $E_0$ として「エネルギーが $E$ の音のうるささ」を
$\log_{10}\dfrac{E}{E_0}$
と定めればよいのでは? と考えることができます。そうすれば、基準音の「うるささ」は0になります。
音圧で表す
「音のエネルギー」よりも「音圧」の方が分かりやすい、使いやすい場合があります。また、音のエネルギーは、音圧の二乗に比例します。そこで、2の結果を音圧の言葉で表現して「音圧 $P$ の音のうるささ」を
$\log_{10}\dfrac{P^2}{P_0^2}$
と定めればよいのでは? と考えることができます。
常用対数の性質を使うと、上式は
$2\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
と変形することができます。
10倍する
上記の式を使うと、数字が細かくなりすぎて使いにくくなることがあります。そこで、上記の式を10倍したものを「音のうるささ」とします:
$20\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
これがデシベルの定義です。
ベル(B)とデシベル(dB)
「デシ(1/10)」
と
「ベル(基準値との比の常用対数)」
に分けて考えることができます。
デシベルの定義は
$デシベル(\mathrm{dB})=20\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
でしたが、数字を $10$ 倍する前の量を「ベル」と言います:
$ベル(\mathrm{B})=2\log_{10}\dfrac{P}{P_0}$
「デシ」は $\dfrac{1}{10}$ を表します。例えば、$1$ リットルは $10$ デシリットルです。
参考:1リットル、1デシリットル、1ミリリットル、1ccの意味と例
補足
デシベルは「音のうるささ」だけでなく「電気信号の大きさ」を表現する場合に使われることもあります。その場合も、同じく基準値との比の常用対数を使って定義されます。
デシベルは、厳密には「対象の強さ」ではなく「対象が基準となる量と比べてどれくらい強いか」を表す相対的な量です。基準値が明確である場合には「対象の強さ」と同一視することができます。
次回は カンデラ、ルーメン、ルクスの意味と変換 を解説します。