確率変数 $X$ に対して、$f(t)=\log E[e^{tX}]$ という関数のことをキュムラント母関数と言います。また、キュムラント母関数を以下のように級数展開したときの係数 $\kappa_n$ をキュムラントと言います:
$\log E[e^{tX}]=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{\kappa_n}{n!}t^n$
キュムラントの例
$X$ が平均 $\mu$ で分散 $\sigma^2$ の正規分布に従うとして、キュムラント母関数を計算すると、
$\log E[e^{tX}]\\
=\log\left\{e^{tx}\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}dx\right\}\\
=\cdots\\
=\mu t+\dfrac{\sigma^2}{2!}t^2$
となります。
(途中で省略した計算は、ガウス積分を使って行います)
よって、
一次のキュムラントは $\kappa_1=\mu$
二次のキュムラントは $\kappa_2=\sigma^2$
三次以上のキュムラントは $\kappa_n=0\:(n\geq 3)$
となります。
キュムラントに関連する用語の整理
キュムラント母関数:
$\log E[{e^{tX}}]$ のことです。
展開したときの係数がキュムラントです。
モーメント母関数(積率母関数):
$E[e^{tX}]$ のことです。
展開したときの係数がモーメントです。
特性関数:
$E[e^{itX}]$ のことです。
3つとも $X$ について期待値を取るので、$t$ の関数です。
モーメント
すなわち、$X^n$ の期待値のことを $n$ 次モーメントと言います:
$\mu_n=E[X^n]$
例.
$E[X]$:一次モーメント(期待値)
$E[X^2]$:二次モーメント
平均まわりのモーメント
また $(X-\mu_1)^n$ の期待値のことを、平均まわりの $n$ 次モーメントと言います:
$\mu’_n=E[(X-\mu_1)^n]$
例.
$E[(X-\mu_1)]=0$:平均まわりの一次モーメントは必ず $0$ になります。
$E[(X-\mu_2)^2]$:平均まわりの二次モーメントは分散です。
モーメントとキュムラントの関係
$\mu_1=\kappa_1$
$\mu_2=\kappa_2+\kappa_1^2$
$\mu_3=\kappa_3+3\kappa_2\kappa_1+\kappa_1^3$
$\kappa_1=\mu_1$
$\kappa_2=\mu_2-\mu_1^2$
$\kappa_3=\mu_3-3\mu_2\mu_1+2\mu_1^3$
尖度と歪度をキュムラントで表す
歪度:
$\dfrac{\mu_3’^{}}{\mu_2’^{\frac{3}{2}}}=\dfrac{\kappa_3}{\kappa_2^{\frac{3}{2}}}$
尖度:
$\dfrac{\mu_4’^{}}{\mu_2’^2}-3=\dfrac{\kappa_4}{\kappa_2^2}$
特に、尖度はモーメントで表現した場合には $-3$ という項が出ますが、キュムラントで表すときれいです。
次回は ベルヌーイ分布の意味、性質、二項分布との関係など を解説します。