例題1:$a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)$
因数分解の難しめの問題を2問解いてみましょう。
解答1
因数分解では、まず展開して、最低次数の文字について整理するのが鉄則です。今回はどの文字についても2次なので、$a$ について整理してみます。
$a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\\
=a^2b-a^2c+b^2c-ab^2+ac^2-bc^2\\
=a^2(b-c)+a(-b^2+c^2)+b^2c-bc^2$
次に、$a$ についての2次式とみて、各係数の部分を因数分解します。
$a^2(b-c)+a(c+b)(c-b)+bc(b-c)$
すると、$(b-c)$ という共通因数が出てきます:
$(b-c)\{a^2-a(c+b)+bc\}$
第二項はさらに公式より因数分解できます:
$(b-c)(a-b)(a-c)$
これでも正解ですが、輪環の順を意識すると、答えは
$-(a-b)(b-c)(c-a)$
となります。
解答2(難しい)
$a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)$
の $a$ と $b$ を交換すると、
$b^2(a-c)+a^2(c-b)+c^2(b-a)\\
=-a^2(b-c)-b^2(c-a)-c^2(a-b)$
となり、もとの式のマイナス1倍になります。同様に、$b$ と $c$ を交換しても、$c$ と $a$ も交換してもマイナス1倍です。
このような性質を持つ式を交代式と呼びます。そして、$a,b,c$ に関する交代式は $(a-b)(b-c)(c-a)$ という因数を持つことが知られています。
よって、与式は3次式なので、定数 $A$ を使って
$a^2(b-c)+b^2(c-a)+c^2(a-b)\\
=A(a-b)(b-c)(c-a)$
と因数分解できることが分かります。
さらに $a^2b$ の係数を比較すると $A=-1$ であることが分かります。つまり、答えは
$-(a-b)(b-c)(c-a)$
となります。
発展問題
例題2:$a^3(b-c)+b^3(c-a)+c^3(a-b)$ を因数分解せよ。
解答
まず展開して、最低次数の文字について整理します:
$a^3(b-c)+b^3(c-a)+c^3(a-b)\\
=a^3b-a^3c+b^3c-ab^3+ac^3-bc^3\\
=a^3(b-c)+a(-b^3+c^3)+b^3c-bc^3$
次に、$a$ についての3次式とみて、各係数の部分を因数分解します。
$a^3(b-c)+a(c-b)(c^2+bc+b^2)+bc(b^2-c^2)\\
=a^3(b-c)-a(b-c)(b^2+bc+c^2)+bc(b+c)(b-c)$
すると、$b-c$ という共通因数が発見できます:
$(b-c)\{a^3-a(b^2+bc+c^2)+bc(b+c)\}$
さらに、第二項を因数分解する必要があるので、最低次数の文字の1つ $b$ について整理してみます:
$(b-c)\{b^2(-a+c)+b(-ac+c^2)+a^3-ac^2\}\\
=(b-c)\{b^2(c-a)+bc(c-a)+a(a+c)(a-c)\}\\
=(b-c)(c-a)\{b^2+bc-a(a+c)\}$
最後に、第三項を因数分解する必要があるので、最低次数の文字 $c$ について整理します:
$(b-c)(c-a)\{c(b-a)+b^2-a^2\}\\
=(b-c)(c-a)\{c(b-a)+(b-a)(b+a)\}\\
=(b-c)(c-a)(b-a)(c+b+a)$
$=-(a+b+c)(a-b)(b-c)(c-a)$
次回は 複二次式の因数分解のやり方と例題5問 を解説します。