$\begin{pmatrix}0&0\\0&0\end{pmatrix}$
や
$\begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&0\end{pmatrix}$
のように、全ての成分が $0$ である行列を零行列(ゼロ行列)と言う。
表記
・零行列は、$O$(アルファベットの大文字のオー)と表記することが多いです。
・$m\times n$ の零行列を $O_{m,n}$ と表記することがあります。例えば、
$O_{2,3}=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&0\end{pmatrix}$
です。
零行列の行列式
以下、正方行列である零行列 $O$ について考えます。
$\det O=0$
よって、$O$ は正則ではありません。逆行列は存在しません。
(余談ですが、$O$ のムーア–ペンローズの疑似逆行列は、$O$ になります)
零行列の固有値
実際、全てのベクトル $\overrightarrow{x}$ に対して
$O\overrightarrow{x}=0 \overrightarrow{x}$
となる(両辺ともにゼロベクトルになる)
ので、全てのベクトル $\overrightarrow{x}$ が固有ベクトルになります。
$O$ のサイズを $n$ とすると、固有空間 $W_0$ の次元は $n$ です。
実は、零行列でなくても、全ての固有値が $0$ になることはあります。
例えば、$\begin{pmatrix}0&0\\1&0\end{pmatrix}$ は全ての固有値が $0$ になります。
実際、固有多項式が $\det(A-\lambda E)=\lambda^2$ となることから分かります。
その他の性質
・零行列は、下半分が $0$ なので、上三角行列です。
・同様に、零行列は下三角行列でもあります。
・零行列は対角行列です。
・零行列のランクは $0$ です。逆に、ランクが $0$ である行列は零行列のみです。対偶法で証明できます。(零行列でないならランクが $1$ 以上)
次回は 単位行列の定義といろいろな性質 を解説します。