固有空間の意味および基底や次元の求め方

最終更新日 2018/08/29

正方行列 $A$ に対して、$\lambda$ を固有値とする。
このとき、$\lambda$ に対応する固有ベクトル全体の集合 $W_{\lambda}$ を、($A$ の固有値 $\lambda$ における)固有空間と言う。

固有空間とは

固有空間 $W_{\lambda}$ は、$A\overrightarrow{x}=\lambda \overrightarrow{x}$ を満たすベクトル $\overrightarrow{x}$ 全体の集合です。

$W_{\lambda}$ は線形空間です。

理由:
・$\overrightarrow{x}\in W_{\lambda}$ なら、そのスカラー倍について、$\alpha \overrightarrow{x}\in W_{\lambda}$ です。
・$\overrightarrow{x_1},\overrightarrow{x_2}\in W_{\lambda}$ なら、$\overrightarrow{x_1}+\overrightarrow{x_2}\in W_{\lambda}$ です。

固有空間の次元について

$\lambda_0$ が $A$ の固有値のとき、固有空間 $W_{\lambda_0}$ の次元は、
・$1$ 以上で
・固有方程式 $p(\lambda)=0$ の、$\lambda_0$ の重複度以下
です。

ただし、$p(\lambda)=\det(A-\lambda E)$ です。

$\lambda_0$ が $A$ の固有値である必要十分条件は、$p(\lambda_0)=0$
です。

例えば、$p(\lambda)=(\lambda-1)(\lambda-2)^3$ となった場合、$\lambda=1,2$ が固有値ですが、
・$\lambda=1$ の固有空間 $W_{1}$ の次元は $1$
・$\lambda=2$ の固有空間 $W_{2}$ の次元は $1$ 以上 $3$ 以下
であることが分かります。

基底と次元を求める

$A=\begin{pmatrix}1&-6&-6\\0&-5&-6\\0&3&4\end{pmatrix}$ の各固有空間の基底と次元を求めよ。

解答

固有方程式を計算すると、
$-(\lambda-1)^2(\lambda+2)=0$
となります。よって、固有値は $\lambda=1$、$\lambda=-2$ です。

・$\lambda=-2$ に対応する固有空間 $W_{-2}$ について
次元は、上記の定理より $1$ です。実際に固有ベクトルを計算すると、実数 $t$ を用いて
$t\begin{pmatrix}-2\\-2\\1\end{pmatrix}$ という形で表せるものなので、基底は、例えば $\begin{pmatrix}-2\\-2\\1\end{pmatrix}$ となります。

・$\lambda=1$ に対応する固有空間 $W_1$ について
次元は、上記の定理より $1$ か $2$ です。実際に固有ベクトルを計算すると、実数 $t_1,t_2$ を用いて
$t_1\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix}+t_2\begin{pmatrix}0\\-1\\1\end{pmatrix}$ という形で表せるものなので、基底は、例えば $\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\-1\\1\end{pmatrix}$ となります。次元は $2$ でした。

まとめ

固有値 $\lambda$ に対応する固有空間は、
$(A-\lambda E)\overrightarrow{x}=\overrightarrow{0}$
を満たすベクトル $\overrightarrow{x}$ の集合です。

つまり、固有空間の基底と次元を求めるためには、以下の3つの手順を行います。

1.$A-\lambda E$ という行列を基本変形して階段標準形 $B$ にする。
2.$B\overrightarrow{x}=0$ を満たす $x$ を $t_1\overrightarrow{x_1}+\cdots +t_d\overrightarrow{x_d}$ と表す。
3.固有空間の次元は $d$ で、基底は $\overrightarrow{x_1},\dots,\overrightarrow{x_d}$ となる。

次回は ハウスホルダー行列とその性質 を解説します。

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