線形代数における基底と次元の意味と求め方

最終更新日 2018/10/28

線形空間の基底、次元について解説します。

基底、次元とは

基底の非常に大雑把な意味
全体を表現するのに必要最低限のベクトルたちのこと

基底のきちんとした意味
ベクトルの集合 $\{\overrightarrow{v_1},\cdots,\overrightarrow{v_n}\}$ で、以下の2つの条件を満たすもの:
条件1.それらの一次結合で全てのベクトルを表現できる
条件2.それらは一次独立である
(一次結合、一次独立の意味については記事末に補足)

条件1は、必要なものが全てそろっていること
条件2は、余分なものが無いこと
を表します。

次元の意味
基底のベクトルの本数 $n$ のことを次元と言います。基底の取り方はたくさんありますが、ベクトルの本数は基底の取り方によらないので、次元が定義できます。

例題

$W=\left\{\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}\in\mathbb{R}^3\mid x+2y+z=0\right\}$
の基底と次元を求めよ。
($W$ は $x+y+2z=0$ を満たす実数 $x,y,z$ の組全体がなす空間)

それでは、解答です。
$x+y+2z=0$ を満たす実数の組全体はどのような集合でしょうか。

$x,y,z$ のうち2つは自由に動くことができます。試しに $y=y_0,z=z_0$ と固定してやると、
$x=-y_0-2z_0$
に定まります。

つまり、$x+y+z=0$ を満たす実数の組全体は
$\begin{pmatrix}-y_0-2z_0\\y_0\\z_0\end{pmatrix}$
(ただし、$y_0,z_0$ は実数全体を動く)と表現できます。

これを書き換えると、
$y_0\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}+z_0\begin{pmatrix}-2\\0\\1\end{pmatrix}$
となります。

よって、
基底は、
$\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}-2\\0\\1\end{pmatrix}$
です。
(理由:緑色の式より、この2本のベクトルの一次結合で $W$ の全てのベクトルを表現できることが分かります。また、これらが一次独立であることも簡単に分かります。つまり、基底であるための2つの条件を満たしています。)

また、基底が2つのベクトルからなっているので、次元は $2$ です。

もっと変数の数が多い場合も、連立方程式を解いて緑色の式のような表現を得ることで、基底と次元を求めることができます。

補足:一次結合、一次独立とは

ベクトルの集合 $\{\overrightarrow{v_1},\cdots,\overrightarrow{v_n}\}$ に対して、それぞれに実数(→注)をかけて足し上げたもの:
$a_1\overrightarrow{v_1}+\cdots +a_n\overrightarrow{v_n}$
一次結合と言います。

また、
「$a_1\overrightarrow{v_1}+\cdots +a_n\overrightarrow{v_n}=\overrightarrow{0}$ なら $a_1=a_2=\cdots=a_n=0$」
という条件が成立するとき、$\{\overrightarrow{v_1},\cdots,\overrightarrow{v_n}\}$ は一次独立であると言います。

注:場合によっては複素数や別の体について考えることもあります。

次回は 正規直交基底(定義、求め方、性質) を解説します。

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