確率変数の和の分布とポアソン分布での例

最終更新日 2017/12/04
確率変数 $X$ と $Y$ の分布が分かっているとき、$X+Y$ はどのような分布に従うか考えてみます。

離散の場合

例えば、サイコロを2つ投げたときの和の分布について考えてみましょう。それぞれのサイコロの出目を $X$ と $Y$ とします。

例えば、サイコロの和が $7$ になる確率は、
「$X=1$ となり $Y=6$ となる確率」
「$X=2$ となり $Y=5$ となる確率」
「$X=3$ となり $Y=4$ となる確率」
「$X=4$ となり $Y=3$ となる確率」
「$X=5$ となり $Y=2$ となる確率」
「$X=6$ となり $Y=1$ となる確率」
を全て足し上げたものです。

つまり、
$P(X+Y=7)=\displaystyle\sum_{k=1}^6P(X=k)P(Y=6-k)$
となります。

一般に、$X+Y$ の分布関数は、
$P(X+Y=z)=\displaystyle\sum_{k}P(X=k)P(Y=z-k)$
という形になります。この式の右辺のように、和が一定になるような部分でかけて足す操作を畳み込みと言います。

連続の場合

次は、$X$ と $Y$ のとりうる値が連続値である場合について考えてみましょう。

$X$ の確率密度関数を $f(x)$
$Y$ の確率密度関数を $g(y)$
とします、このとき、
$X+Y$ の確率変数は、
$h(z)=\displaystyle\int f(t)g(z-t)dt$
という形になります。
離散の場合と同じく「$X$ が $t$ になって、$Y$ が $z-t$ になる確率、を $t$ を動かして足し上げると $X+Y$ が $z$ になる確率になる」というイメージです。

$f(z)+g(z)$ にはなりません。確率密度関数を単純に足してはいけません。

例題

$X$ が平均 $\lambda_1$ のポアソン分布、$Y$ が平均 $\lambda_2$ のポアソン分布に従うとき、$X+Y$ が従う分布を求めよ。

解答

ポアソン分布の定義より、
$P(X=k)=e^{-\lambda_1}\dfrac{\lambda_1^k}{k!}$
$P(Y=k)=e^{-\lambda_2}\dfrac{\lambda_2^k}{k!}$
です。

よって、
$P(X+Y=z)\\
=\displaystyle\sum_{k=0}^zP(X=k)P(Y=z-k)\\
=\displaystyle\sum_{k=0}^ze^{-\lambda_1}\dfrac{\lambda_1^k}{k!}e^{-\lambda_2}\dfrac{\lambda_2^{z-k}}{(z-k)!}\\
=e^{-\lambda_1-\lambda_2}\displaystyle\sum_{k=0}^z\dfrac{1}{k!(z-k)!}\lambda_1^k\lambda_2^{z-k}\\
=\dfrac{e^{-\lambda_1-\lambda_2}}{z!}\displaystyle\sum_{k=0}^z{}_z\mathrm{C}_k\lambda_1^k\lambda_2^{z-k}\\
=\dfrac{e^{-\lambda_1-\lambda_2}}{z!}(\lambda_1+\lambda_2)^z$
となります。よって、$X+Y$ は平均 $\lambda_1+\lambda_2$ のポアソン分布に従うことが分かりました。

期待値と分散

和の分布の計算は畳み込み積分を計算する必要がありますが、和の期待値と分散は簡単に求めることができます。

期待値については、
$E[X+Y]=E[X]+E[Y]$
が成立します。つまり、和の確率変数の期待値は、各々の期待値の和になります。これは、$X$ と $Y$ が独立でなくても成立します。

分散については、
$\mathrm{Var}[X+Y]=\mathrm{Var}[X]+\mathrm{Var}[Y]+2\mathrm{Cov}(X,Y)$
が成立します。$\mathrm{Cov}(X,Y)$ は $X$ と $Y$ の共分散です。残念ながら、分散はそれぞれの分散の和にはなりません。ただし、$X$ と $Y$ が無相関の場合には、共分散 $\mathrm{Cov}(X,Y)$ になるため、
$\mathrm{Var}[X+Y]=\mathrm{Var}[X]+\mathrm{Var}[Y]$
となります。

次回は 確率変数の積の期待値と分散 を解説します。

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