相似変換の意味、表現行列や基底の変換行列との関係を整理

最終更新日 2018/12/28

・表現行列とは何か?
・基底の変換行列とは何か?
・相似変換 $P^{-1}AP$ の意味
について解説します。

行列の相似変換とは

行列 $A$ を $P^{-1}AP$ に対応させるような変換のことを行列の相似変換と言います。

ただし、$A$ は正方行列、$P$ は正則行列とします。

相似変換では、いろいろな量が保存されます。例えば、
・$A$ と $P^{-1}AP$ の固有値は同じ。
・$A$ と $P^{-1}AP$ のトレースは同じ。
・$A$ と $P^{-1}AP$ の行列式は同じ。
などが証明できます。

相似変換の意味

実は、相似変換にはもう少し深い意味があります。

このページの目標は、以下の1~3を理解することです。

1. ある線形写像 $\phi$ の基底 $E$ における表現行列を $A$ とする。
2. 基底を $E$ から $F$ に変換してみる。
3. すると、変換後の基底における $\phi$ の表現行列が $P^{-1}AP$ という形になる。 つまり、$A$ と $P^{-1}AP$ は同じ線形写像を表現するものなので、ある意味で同じもの。

1~3を順々に解説していきます。

1. 表現行列とは

表記の簡単のため、二次元で考えます。基底を $E=\{e_1,e_2\}$ とします。

$(\phi(e_1),\phi(e_2))=(e_1,e_2)A$
という式を満たすような $A$ を $\phi$ の、基底 $E$ における表現行列と言います。

ただし、$(e_1,e_2)$ は基底ベクトル(縦ベクトル)を並べた2×2行列で、$(\phi(e_1),\phi(e_2))$ は、基底ベクトルに $\phi$ を作用させたベクトルを並べた2×2行列です。

つまり、$A$ は、線形写像 $\phi$ が「基底ベクトル $e_1,e_2$ をどのように変換するか」を表現する行列です。そして、実は線形写像は「基底ベクトル $e_1,e_2$ をどのように変換するか」によって、完全に表現できます。

2. 基底の変換行列とは

2種類の基底 $E=\{e_1,e_2\}$ と $F=\{f_1,f_2\}$ の間に、
$(f_1,f_2)=(e_1,e_2)P$
という関係が成立するとき、$P$ を基底の変換行列と言います。

ただし、$(e_1,e_2)$ と $(f_1,f_2)$ はそれぞれの基底ベクトルを並べた2×2行列です。

基底を並べた行列は正則なので、$P$ も正則になります。よって、逆行列 $P^{-1}$ が存在して、
$(f_1,f_2)P^{-1}=(e_1,e_2)$
という式も成立します。

3. 変換後の基底における表現行列

以上の等式を使って、変換後の基底における $\phi$ の表現行列が $P^{-1}AP$ という形になることを確認してみます。

変換後の基底 $F$ における $\phi$ の行列を $B$ とおくと、
$(\phi(f_1),\phi(f_2))=(f_1,f_2)B$
となります。

そこで、$(\phi(f_1),\phi(f_2))$ を変形していきます。

まず、$\phi$ が線形写像であることと、基底の変換式(青い式)を使うと、
$(\phi(f_1),\phi(f_2))=(\phi(e_1),\phi(e_2))P$
となります。次に、基底 $E$ における表現行列の式(赤い式)を使うと、
$(\phi(e_1),\phi(e_2))P=(e_1,e_2)AP$
となります。最後に、基底の変換式(緑の式)を使うと、
$(e_1,e_2)AP=(f_1,f_2)P^{-1}AP$
となります。

以上3つを合わせると、
$(\phi(f_1),\phi(f_2))=(f_1,f_2)P^{-1}AP$
となり、変換後の基底における $\phi$ の表現行列が $P^{-1}AP$ であることが分かりました。

次回は 行列式の公式、性質一覧 を解説します。

ページ上部へ戻る