反射律、対称律、推移律について解説します。$R$ を二項関係とします。
$=$ | $\geq$ | $>$ | 空っぽ(後述の例A) | 後述の例B | |
反射律 | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
対称律 | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
推移律 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
このページでは、5つの例について説明します。
反射律の意味と例
・全ての実数 $x$ に対して $x=x$
なので、$=$ は反射律を満たします。
・全ての実数 $x$ に対して $x\geq x$ なので、$\geq$ は反射律を満たします。
・$x> x$ は成立しないので、$>$ は反射律を満たしません。
対称律の意味と例
・$x=y$ ならば $y=x$
なので、$=$ は対称律を満たします。
・$x\geq y$ ならば $y\geq x$
は成立するとは限らないので、$\geq$ は対称律を満たしません。
・同様に、$>$ も対称律を満たしません。
推移律の意味と例
・$x=y$ かつ $y=z$ ならば $x=z$
なので、$=$ は推移律を満たします。
・$x\geq y$ かつ $y\geq z$ ならば $x\geq z$ なので、$\geq$ は推移律を満たします。
・同様に、$>$ も推移律を満たします。
他の例
$=$ | $\geq$ | $>$ | 空っぽ(後述の例A) | 後述の例B | |
反射律 | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
対称律 | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
推移律 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
例A:対称律と推移律を満たすが反射律は満たさない例
要素が空である二項関係(例えば、正の実数に対して、足したらマイナスになるものを集めた二項関係)$R$ について考えてみましょう。
すると、そもそも $xRy$ となる $x$ と $y$ は存在しないので、$R$ は対称律と推移律を満たします。しかし、要素が空なので、反射律は満たしません。
例B:反射律と対称律を満たすが推移律は満たさない例
表のように、$\{a,b,c\}$ 上で定義された二項関係について考えてみましょう。
$a$ | $b$ | $c$ | |
$a$ | ◯ | ◯ | × |
$b$ | ◯ | ◯ | ◯ |
$c$ | × | ◯ | ◯ |
これは、対角成分が◯なので反射律を満たします。また、対角成分に関して対称なので、対称律も満たします。しかし、$aRb$ かつ $bRc$ ですが $aRc$ ではないので推移律は満たしません。
このように、集合の要素数が少ないときには、二項関係の表を書けば、反射律と対称律を満たすかどうかが簡単に確認できます。
ちなみに、反射律、対称律、推移律の全てを満たす二項関係を同値関係と言います。
次回は 剰余類の意味(高校数学および群論)と2つの姿 を解説します。