半径 $a$ の半球の重心は、球の中心 $O$ から $\dfrac{3}{8}a$ の位置にある。
半球の重心の位置を計算する方法について、詳しく解説します。
(前半)積分を立式
半球の「中心線」を $z$ 軸と呼ぶことにします(冒頭の図参照)。対称性より、半球の重心は $z$ 軸上にあります。中心 $O$ からの距離、つまり重心の $z$ 座標 $z_{G}$ を計算してみましょう。
重心の定義より、$z_{G}=\dfrac{\displaystyle\int z dV}{\displaystyle\int dV}$ となります。$dV$ は微小な立体の体積に対応します。
分母は、半球の体積そのものなので、公式より
$\dfrac{4}{3}\pi a^3\cdot\dfrac{1}{2}=\dfrac{2}{3}\pi a^3$
となります。
次は分子です。
「$z$ から $z+dz$ の間にある薄い円板」の半径は $\sqrt{a^2-z^2}$ で厚さは $dz$ なので、体積はおおよそ $\pi(\sqrt{a^2-z^2})^2dz$ です)。よって、この円板の分子の積分への寄与は $z\cdot\pi (a^2-z^2)dz$ となります。
これを $z=0$ から $z=a$ まで積分すればよいので、
$z_{G}=\dfrac{\displaystyle\int_{0}^az\pi(a^2-z^2)dz}{\dfrac{2}{3}\pi a^3}$
となります。
(後半)積分を計算する
あとは定積分を計算するだけです。ここからは高校数学です。
$\displaystyle\int_0^az\pi(a^2-z^2)dz\\
=\pi\displaystyle\int_0^a(a^2z-z^3)dz\\
=\pi\left[\dfrac{a^2z^2}{2}-\dfrac{z^4}{4}\right]_0^a\\
=\dfrac{\pi a^4}{4}$
となります。
よって、
$z_{G}=\dfrac{\frac{\pi a^4}{4}}{\frac{2}{3}\pi a^3}$
$=\dfrac{3}{8}a$
となります。
補足、まめ知識
・答えの $\dfrac{3}{8}a$ というのは、半径の半分より少し小さいので「重心は真ん中より少しだけ下の方にありそう」という物理的な直感と一致します。直感と証明の結果が一致していると楽しいです。
・重心の座標は長さと同じ次元を持ちます。$z_{G}$ は計算する前から (定数)×$a$ という形になることが分かります。
次回は 球面集中現象 を解説します。