以下の難しそうなテイラー展開の式の意味を一から解説します。
$f(x)$ の $x=a$ でのテイラー展開は、
$f(a)+\dfrac{f'(a)}{1!}(x-a)\\+\dfrac{f^{(2)}(a)}{2!}(x-a)^2\\+\dfrac{f^{(3)}(a)}{3!}(x-a)^3\\+\cdots$
ただし、$f^{(n)}(x)$ は $f(x)$ を $n$ 回微分したものを表します。
このページでは、一次までのテイラー展開、二次までのテイラー展開から順々に説明して、最終的なテイラー展開の式を説明します。最後に、テイラー展開について覚えておくべきことをまとめます。
テイラー展開とは(一次近似まで)
例として、$y=e^x$ の $x=0$ におけるテイラー展開を考えてみましょう。
まずは、$x=0$ の近くで $e^x$ っぽい一次関数を探してみましょう。
$e^x$ という関数は、
・$x=0$ での関数値は $e^0=1$
・$x=0$ での微分係数は $e^0=1$
という2つの条件を満たします。
よって、
・$g(0)=1$
・$g'(0)=1$
という同じ条件を満たす一次関数 $g(x)$ を、$e^{2x}$ っぽい一次関数とみなしましょう。
少し計算してみると、この2つの条件を満たす一次関数は、$g(x)=1+x$ であることが分かります。実際 $g(0)=g'(0)=1$ です。
より一般に、$x=a$ での関数値と微分係数値が $f(x)$ と一致するような一次式は、$f(a)+f'(a)(x-a)$ となります。
テイラー展開とは(二次近似まで)
次に、$x=0$ の近くで $e^x$ っぽい二次関数を探してみましょう。
$e^x$ という関数は、
・$x=0$ での関数値は $e^0=1$
・$x=0$ での微分係数は $e^0=1$
・$x=0$ での二階微分係数は $e^0=1$
という3つの条件を満たします。
よって、
・$g(0)=1$
・$g'(0)=1$
・$g^{(2)}(0)=1$
という同じ条件を満たす二次関数 $g(x)$ を、$e^x$ っぽい二次関数とみなしましょう。
少し計算してみると、この3つの条件を満たす二次関数は、$g(x)=1+x+\dfrac{x^2}{2}$ であることが分かります。
より一般に、$x=a$ での関数値と微分係数値と二階微分係数値が $f(x)$ と一致するような二次式は、$f(a)+f'(a)(x-a)+\dfrac{f^{(2)}(a)}{2!}(x-a)^2$ と表現できます。
テイラー展開とは(結論)
$x=0$ の近くで $e^x$ に似ている一次式は $1+x$ でした。
$x=0$ の近くで $e^x$ に似ている二次式は $1+x+\dfrac{x^2}{2}$ でした。
これを三次式、四次式、$\dots$ と、どんどん次数を増やしていったものがテイラー展開です。
今までと同様な考え方のもと、$e^x$ っぽい $n$ 次式を計算すると、
$1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}\cdots +\dfrac{x^n}{n!}$
となります。
これを $e^x$ の $x=0$ での $n$ 次までのテイラー展開と呼びます。
$e^x$ の場合、この $n$ をどんどん大きくしていくと、近似は限りなく正確になっていきます。つまり、
$e^x=1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}\cdots$
という式が、任意の $x$ に対して成立します。
まとめ
・$f(x)$ という難しい関数を、多項式という簡単な関数で表す(近似する)のがテイラー展開。
・どのような式で近似するのかは、$x=a$ での情報(関数値、微分係数値、二階微分係数値、$\dots$)を使って計算する。
・多項式の次数を増やしていくと、近似はどんどん正確になると期待できる(が、そうならないこともある)。
・具体的には、以下の式が $f(x)$ の $x=a$ でのテイラー展開:
$f(a)+\dfrac{f'(a)}{1!}(x-a)\\+\dfrac{f^{(2)}(a)}{2!}(x-a)^2\\+\dfrac{f^{(3)}(a)}{3!}(x-a)^3\\+\cdots$
次回は リプシッツ連続の意味、他の連続性との関係 を解説します。