単射、全射、全単射の意味と覚え方など

最終更新日 2019/05/12

単射:「一のものから来る」ような関数のこと。
全射:「部に行く」ような関数のこと。

単射、全射、全単射という数学用語について、定義と具体例を解説します。

なお、この記事では「関数」という言葉を使いますが、単射、全射の議論をするときには「写像」という言葉を同じ意味で使うことが多いです。

単射の意味

関数 $f$ について、「単一のものから来る」という性質が成り立つ時、$f$ は単射であると言います。

ここで「単一のものから来る」とは、どのような $y$ に対しても、$f(x)=y$ となるような $x$ が2つ以上は存在しないことを表します。

単射の例、単射でないものの例

例えば、$f(x)=|x|$ という関数は単射ではありません。

なぜなら、$y=1$ とすると、$f(x)=1$ となるような $x$ が $1$ と $-1$ で2つ存在するからです。

単射でないものの例
例えば、$f(x)=2x$ という関数は単射です。

なぜなら、$f(x_1)=f(x_2)$ となるような相異なる $x_1,x_2$ が存在しないからです。「単一のものから来る」と言えます。

単射の例

このように、単射の定義は、
「$f(x_1)=f(x_2)$ となるような相異なる $x_1,x_2$ が存在しない」
と言い換えることもできます。

全射の意味

関数 $f$ について、「全部に行く」という性質が成り立つ時、$f$ は全射であると言います。

ここで「全部に行く」とは、(予め定めた行き先の集合内の)どのような $y$ に対しても、$f(x)=y$ となるような $x$ が存在することを表します。

なお、全射のことを「上への写像」と言うこともあります。

全射の例、全射でないものの例

例えば、整数を2倍する関数 $f(x)=2x$ は全射ではありません。

なぜなら、例えば $f(x)=1$ となるような $x$ が存在しないからです。「全部に行く」という性質は満たしません。

全射でないものの例
例えば、実数に1加える関数 $f(x)=x+1$ は全射です。

なぜなら、どのような実数 $y$ に対しても、$f(x)=y$ となる $x$ が、$x=y-1$ とすることで構成できるからです。「全部に行く」と言えます。

全射の例

全単射とは

全射であり、かつ、単射であるような関数(写像)のことを全単射と言います。

全単射は「単一のものから来る」かつ「全てに行く」ような関数です。

全単射は、2つの集合(定義域と終域)の間に1対1対応を定めます。つまり、全単射が存在する場合、定義域と終域は、ある意味で「同じサイズ」と考えることができます。(数学用語では、全単射が存在するような2つの集合は「濃度が同じ」と言います)

おわりに

数学では、いろいろな集合の間の対応関係(関数、写像)を考えることが多いです。単射、全射、全単射という言葉を使うと、対応関係の性質を簡潔に記述できます。

次回は 全単射と逆写像の存在についての2つの性質 を解説します。

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